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皆さん、お元気ですか? 吟遊詩人/佐藤高霊です。
南天の葉実が赤く染まりつつある秋、我が家の庭では今、黄金色に輝く 金木犀の花が心地よい香りを放っています。 金木犀(キンモクセイ)の学名のOsmanthus fragrans var.aurantiacusと いうのは、Osmanthus=モクセイ属、fragrans=芳香のある、 aurantiacus=橙黄色の、という意味だそうです。 Osmanthusは、ギリシャ語の[osme=香り]+[anthos=花]が語源。 そして英語ではfragrant olive。何れも香り豊かなことがその名の由来。 中国では金木犀のことを丹桂、銀木犀を桂花など、「桂」を使っています。 この花の香をお茶にして楽しむのが桂花茶、柚子の香りと共に私の大好 きな自然の香りです。 そこで今月は、この優雅な金木犀(キンモクセイ)の花と香りに因んで、 高啓の名詩「題桂花美人」をお届け致します。 金木犀(キンモクセイ)の花と香りを楽しむのは陽下でも月下でもどちらも 良し、どうぞこの名詩をじっくり味わってみて下さい。
******************************************************************* 桂花美人に題す 高啓 桂花の庭院 月紛紛 霓裳を按じ罷んで 酒半ば醺す 一枝折り得て 携えれば袖に満つ 羅衣 今夜 熏するを須ひず
<読み方> けいかびじんに だいす こうけい
けいかの ていいん つき ふんぷん げいしょうを あんじ やんで さけ なかば ようす いっし おりえて たずさえれば そでに みつ らい こんや くんするを もちいず
<漢詩原文> 題桂花美人 高啓
桂花庭院月紛紛 按罷霓裳酒半醺 折得一枝携満袖 羅衣今夜不須熏
<語句の解説> 桂花・・・・・金木犀(キンモクセイ)の花。 霓裳・・・・・虹のように美しい舞の曲。 醺・・・・・・酒に酔う、の意。 羅・・・・・・薄絹の衣、の意。 不須熏・・・・香を焚く必要がない、の意。
<通釈> 金木犀(キンモクセイ)の香りが漂う庭に、月光が溢れている。 美女が舞う美しい調べも終わる頃、程良い酔い心地となった。 金木犀(キンモクセイ)のひと枝を折り持てば、忽ち袖に香りが満ち 満ちる。今夜は薄絹の衣に香を焚く必要もなさそうだ。
<高啓メモ> 1336〜74年。元末明初の詩人。字は季廸(kiteki)、号は青邱。 蘇州の人。明代を代表する詩人。 <鑑賞> 高啓の名詩「題桂花美人」、いかがでしたか? 月下に、桂花の高貴な香りと美女の舞を楽しみながら酒を飲む、最高の 舞台演出ですね。さすが高啓と感心しきり。短命が惜しまれます。 何かと気ぜわしい世に生きる私たちも、時にはそんな金木犀の甘い香り と情緒をゆっくりのんびり楽しみたいものです。
では次回初霜に合える日またお会いしましょう。 此れ私の本流。 |